私がはじめて、本格的な「占い」というものに出会ったのは「人の紹介でしか見ないという占い師さん」に、叔母に連れて行ってもらった時だったように思います。
 もう30年以上も前の話で、かなり記憶があいまいなのですが、とても面白い体験だったのでお伝えしてみようと思います。
 場所は、金沢市の一見ふつうの住宅街の一角にある、とても風情を感じる数軒の長屋のひとつ。
 占い師さんは、きちんと着物を着こなした響く声が印象的な、かなりご高齢の男性の方でした。
 叔母があらかじめ電話で予約した時間にそちらを訪問して、大人3人が入ればもういっぱいになるほど狭く、所狭しと茶色く変色した本や書物、ファイルなどがうず高く雑然と積まれてた部屋に通されました。
 時間は1時間と決められていて、占ってもらう人全員の生年月日と名前を紙に書いて渡すと、いくつかの資料を使って手早く各人を調べて、悩みの内容や私と相手との関係などを質問されたりしました。驚いたのは、かなりひどい弱視の人を「この人は相当眼が悪いだろう」と言い当てた事。他にもいくつか、先天性的な身体的欠陥や宿命的な性質を「決まっている事だからね」と明確にテキパキと当てておられました。あとは、悩んでいる本人に対して気休めになるような事はほとんど言わず「それはどうにもならない事!」とか「無理!」などと結構はっきり言われた事(笑)。あまりにも無下に言い切られて焦りながら「でも、私はこうしたいのですが」と言い募ると「それは小知!」と少しキツめに怒られて「大知で生きなさい!」と諭されたりして、さらに面食らいました。

 料金は思った金額を置いていけばいいよと言われて、5,000円ほど払ったように思います。
 ご自分のお話も少しはされて、昔は地方の新聞で占いの連載をしていて天狗になっていた時期もあったんだよ(掲載された新聞を見せながら)とか、株式投資で生計を立てていて(投資用のグラフなどを書いたノートを見せながら)お金には困っていないから見料はいくらでもいいよとか、身の回りのことはお手伝いさんにしてもらっているとか、いろいろおっしゃってましたね。
 それから数年間は、悩みがあるたびに(一度は友人に頼まれて付き添いで)4〜5回はお伺いさせていただいたように記憶してますが、1度、近くまで行ってから道に迷ってしまったことがありました。仕方がないので電話して「何時に予約した〇〇です。〇〇のバス停のあたりまでは来ているのですが、そこからお宅への道がわからなくなりまして…」と告げると「縁がなかったのだから、今日はもう見れない。諦めなさい。」などとおっしゃられてしまい「こちらも悩んで精神的にキツい状態ではるばる2時間ぐらいかけて訪ねて来ているのだから、そこをなんとかお願いします!」と食い下がって、道順を教えてもらって見ていただいた事がありました(苦笑)。

 最後にお伺いしてから20年ぐらい経ちましたが、あの頃は悩みを相談する事で精一杯でしたけど、今から思えば、ロケーションといい、建物や部屋の雰囲気といい、ご本人の出で立ちや風貌・声などなど、もう出来過ぎ感満載の占い体験だったなぁと思います。また「小知と大知」「縁」などというその後の自分の人生に、とても大切になってくる考え方や姿勢なども学ばせていただいた貴重な機会だったとも思います。